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総合診療
公開日
2025.9.25
更新日
2026.5.27

こんにちは。横浜LA内科・内視鏡クリニック 院長の本多です。
診察室でよくいただくご相談に、こんなものがあります。
💭風邪をひいたので、抗生剤を出してもらえますか?
💭この前、家で余っていた抗生剤を飲んだら早く良くなった気がしました。同じ薬を飲んだらよいでしょうか?
こうしたお問い合わせをいただくたびに、私は心の中で「よしっ、わかりやすくお伝えするぞ!」と意気込んでいます。
なぜなら、風邪には抗生剤が効かないからです。
今回のコラムでは、
風邪に抗生剤が効かない理由
抗生剤が効く「細菌」と、効かない「ウイルス」の違い
将来の治療を難しくしてしまう「耐性菌」の問題
について、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。
「えっ、そうだったの?」と思われた方にこそ、最後まで読んでいただけるとうれしいです。
「風邪になったら抗生剤」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそれは誤解です。
なぜなら、
風邪の原因のほとんどはウイルス
抗生剤はウイルスには効かず、効くのは細菌のみ
だからです。
多くの方が「ウイルス」や「細菌」という名前を聞いたことはあると思います。しかし、両者の違いを正確に理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。
ウイルスと細菌には、下記のような違いがあります。
【ウイルスと細菌の違い】

ウイルスや細菌による病気はどちらも「感染症」と呼ばれますが、その原因がウイルスなのか、細菌なのかによって治療法が大きく異なります。
これは例えば、「通常火災」と「電気火災」の違いと似ています。
木や紙などが燃える、いわゆる普通の火災は”水で消火する”のに対し、感電の恐れがある電気火災では”水を使うのは絶対NG”となっています。
同じように、「感染症」にかかったとき、発熱や咳などの症状がよく現れますが、その原因によって対処が変わります。
”どんな火事(感染症)も水(抗生剤)で消せばいい”というわけではないのです。
だからこそ、「何が原因で起きているか」の判断は重要となります。

実際の診察では以下の情報などをもとに、医師が総合的に判断しています。
症状の経過と特徴
発熱の出方、鼻・のど・咳の様子 など
身体に現れている変化
のどの腫れ、肺の音 など
検査
・迅速検査(綿棒で鼻・のどの「ぬぐい液」を取り、数分で結果が出る検査)
・血液検査
・画像検査(レントゲンなど)
地域での流行状況
💭抗生剤が使えないなら、じゃあ風邪はどうやって治すの?
その答えは「風邪は身体が持っている免疫の力で治す」です。
風邪は数日〜1週間程度で自然に軽快することが一般的です。
回復を支えるために、次の3点を意識しましょう。
解熱鎮痛剤・咳止めなどを症状に合わせて使う
水分や栄養を取る
しっかり身体を休める
風邪の治療は「症状を抑えつつ上手に休む」が正解です。
抗生剤を飲んだら体調が良くなったように感じたことがある場合も、実は身体の回復力で自然に軽快に向かっていることがほとんどだと考えられます。
ただし下記にあてはまる場合は、無理をせず、早めの受診を検討してくださいね。
高熱が続く
息苦しさがある
強いのどの痛み・長引く咳がある
持病がある
小さなお子さん・高齢の方など
💭でもなんとなく、飲んでおけば安心な気がする…
💭家に余ってる抗生剤があるから、念のため飲んでも大丈夫かな?
もしあなたがそう感じているなら、実は、ここに落とし穴が。
「抗生剤に害はない」と思われがちですが、実際には次のような副作用の恐れがあります。
下痢・腹痛など
薬に対するアレルギー
抗生剤は「悪い菌」だけでなく、腸の中にいる「身体に良い菌(腸内細菌)」まで減らしてしまいます。
その結果、腸内細菌のバランスがくずれて下痢や腹痛が起こりやすくなることも。
また、身体に備わる免疫システムが抗生剤の成分を「身体にとって危険なもの」と勘違いしてしまうことがあります。そのため人によっては、発疹などのアレルギー反応が起こってしまう可能性があります。
そして一番大きなリスクは、耐性菌です。
耐性菌とは、抗生剤が効かなくなった細菌のことです。
抗生剤を正しく使わないと、この耐性菌が生まれやすくなります。
たとえば
本来必要のない「風邪」で使う
症状が良くなったからと、量を減らしたり途中で止める
同じ薬を繰り返し使う
こうした使い方をすると、細菌が”学習”してしまい、薬の効かない強い菌に変わってしまうのです。
イメージとしては、ゲーム序盤の弱小キャラが、何度も戦ううちに”ボスキャラ”並みに強くなるようなもの。
一度耐性菌に感染すると、有効な薬が限られて治療が難しくなったり、病気の重症化リスクが高まることも報告されています。
特に高齢者や体力の弱っている人では重症化しやすいため、より注意が必要です。
こうした背景から、厚生労働省も「風邪に抗生剤は使わないで」と呼びかけています。

抗生剤は、細菌が原因となる病気ではとても頼りになる薬です。
例えば「溶連菌による扁桃炎」「中耳炎」「膀胱炎」などが挙げられます。
ただし、抗生剤は正しく使ってこそ効果を発揮する薬です。
そのために大切なのが次のルール。
必要なときに、必要な量を、期間を守って
【必要なとき】
抗生剤が効くのは「細菌」が原因の病気です。
必要かどうかは、医師が症状や検査結果をもとに判断します。
「念のため」「早く治りたいから」といった自己判断での使用は危険です。
【必要な量を】
処方された量をきちんと守ることが大切です。
「多めに飲めば早く治る」「良くなってきたから量を減らす」といった考えは誤りです。
量を守らないと、効果が十分に出なかったり、副作用や耐性菌のリスクが高まります。
【期間を守って】
症状が軽くなっても、自己判断で中止してはいけません。
生き残った細菌が“耐性菌”に変わってしまう恐れがあるからです。
医師の指示に従って、処方された日数をきちんと飲みきることが治療の基本となります。
薬の効果をしっかり発揮させるためにも、こうしたルールを守ることを心がけましょう。

風邪のときに「抗生剤をください」と言われることは珍しくありません。
しかし、このコラムを読んでくださったあなたは、「風邪には抗生剤はいらないんだ」ということを理解していただけたのではないでしょうか。
大切なのは、必要なときに正しく薬を使い、必要ないときは自分の身体の回復力を信じること。
「なんとなく」「念のため」で抗生剤を使うことは、本来できたはずの感染症治療を難しくしてしまうことにもつながります。
未来の自分や大切な人を守るためにも「抗生剤の3つのルール」をきちんと守っていきましょう。
とはいえ、熱・だるさがつらいときや、
🌀いつまで続くんだろう
と不安になることもあると思います。
そんなときは、どうぞ無理せず声をかけてください。
解熱鎮痛剤などの症状を和らげる薬もありますし、「あとどのくらいで良くなるのか」といった見通しをお伝えすることもできます。
横浜LA内科・内視鏡クリニックは、風邪とたたかう患者さんも全力でサポートいたします。
どうぞお気軽に、頼れるかかりつけとしてご相談ください。
それではまた、次のコラムで!
参考文献
[1] 国立健康危機管理研究機構 AMR臨床リファレンスセンター: 風邪に抗菌薬は効きません [https://amr.jihs.go.jp/general/1-6-1.html(2025年9月25日閲覧)]
[2] 国立健康危機管理研究機構 AMR臨床リファレンスセンター: 処方された抗菌薬は医師の指示通り服用しましょう [https://amr.jihs.go.jp/general/1-6-2.html(2025年9月25日閲覧)]
[3] 政府広報オンライン: 抗菌薬が効かない「薬剤耐性(AMR)」が拡大!一人ひとりができることは? [https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201611/2.html(2025年9月25日閲覧)]
[4] 厚生労働省 健康・生活衛生局 感染対策部 感染症対策課 編: 抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 ダイジェスト版. [https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001329342.pdf(2025年9月25日閲覧)]